治療の現場から
カポジ併発!ステロイド抵抗性となった最重症アトピー 症例:1
2016.06.01治療の現場から
30代 男性 入院期間 2014年2月~5月
入院までの経緯
学童期には肘関節に皮膚炎が生じたが、15歳までで自然消退。
24歳で手指に湿疹が生じるようになり、近医に通院しステロイド外用を使用し始めた。
その後、改善と悪化を繰り返しながら範囲は腕から肩、背部、腹部、両下肢、顔へと次第に拡大。
ステロイドもアルメタ→アンテベート→顔プロトピック+頭皮デルモベートローションに増強されたが、アトピー性皮膚炎は10年間で全身に拡大した。
2013年12月から下肢のしびれや浮腫、冷えを感じるようになり、2014年1月からは下肢の浮腫から滲出液が生じるようになった。
浮腫の悪化と膝の皮膚の苔癬化(たいせんか)で下肢(脚)は硬直化し、痛みで歩く事も苦痛に。
滲出液が増加し、下肢に包帯をしても垂れるようになった。
通院していた病院からは入院してのステロイド内服を勧められたが、ステロイド治療に限界を感じ、当院のHPを知り入院を決意。
入院予定日を前に、顔を中心にカポジー(ヘルペスウィルスの感染)が生じ、院長の判断で、予定日を待たず緊急入院となった。入院時は、自覚症状評価POEMのアンケートに答える余裕もないほどの重症だった。
【入院時にカポジが生じていた他の症例】
重症アトピーが自宅脱ステのリバウンドで最重症化していた青年 入院期間:2015年10月~12月:症例21
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
入院後の経過
入院直後は抗ウイルス薬の点滴療法を行いながらバイオ入浴を開始。本人の希望もあり、ステロイド・プロトピックといった免疫抑制剤は使いませんでした。
10年間ステロイド治療を続けていたことから、脱ステロイドに伴うリバウンドはありましたが、最重症のアトピー性皮膚炎は徐々に改善し、薬剤はほとんど必要なくなりました。
ステロイドやプロトピックでもコントロールできなかった最重症のアトピーの患者さんですが、皮膚炎のマーカーであるTARCは3ヶ月で18733→1235まで低下。自覚症状の値POEMも4まで低下し大きく改善しました。
本来の自然環境に戻ればステロイドに頼る必要はなくなります。
この症例では、一般ステロイド治療での10年を3ヶ月で取り戻しています。
久保院長コラム
退院から2年が経過するのを機に、外来受診に訪れてくれたこの患者さん。
コンピューター関連の仕事に就く非常に有能な方ですが、ハードワークと不摂生な生活が悪化の原因になっていたことに気が付き、退院後は仕事とプライベートのバランスを見直して、良好な状態を維持しています。
自宅でのバイオ入浴が短時間でも良好な状態が維持できているとのことで、血液検査の結果、TARCが基準値内の377まで改善、IgEが退院時と比較して3分の1以下に低下、好酸球も基準値目前であることからも、その好調さがうかがえます。