治療の現場から
秋・冬のアトピー注意点:久保Dr.からのアドバイス 2023年10月版
2023.10.11治療の現場から
院長 久保 賢介 のプロフィール
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介
秋・冬に気を付けたいアトピーの悪化要因とは!?
暑い夏が終わり、秋は比較的アトピーの症状が安定する方が多い時期ですが、寒さが強まるにつれ乾燥などが原因で悪化してしまうことがあります。
今回は、アトピー患者さんがこれからの秋冬シーズンを過ごす上で知っておいていただきたい注意点をいくつかご紹介します。
秋のアレルゲン
春は花粉症をきっかけに症状が悪化する方が多いのですが、秋にもブタクサやヨモギなどの花粉が飛散します。
また、夏場に繁殖したダニの死骸やフンは秋にかけて生活環境に蓄積していき、このようなアレルゲンが引き金になって、アトピー症状が不安定になっている患者さんもいらっしゃいます。
布団やベッド、ソファーなどをはじめとした生活環境の掃除を心がけましょう。
また、皮膚が露出している部位だけ局所的に皮膚症状が生じる場合には、花粉の影響なども疑って、洗い落としたり濡れタオルで拭くなどして、皮膚に付着したアレルゲンを除去しましょう。
乾燥防止のためせっけん類は使用せず、水やお湯のみで充分です。
マスクのかぶれ対策も
過去数年は新型コロナウイルスの感染防止のため、自宅以外ではずっとマスクを着用しているという人が多く、マスクで顔がかぶれて痒みが出ている人も多くいました。
マスクが必須の世の中ではなくなりましたが、業種によってはまだまだ仕事中はマスクの着用が必要だという方もいらっしゃいます。
自然素材のマスクを使ったり、場面に応じて外すなどの対策をおすすめします。
日々の洗濯にもひと工夫
シャンプーや体を洗うせっけん・洗濯洗剤に、合成界面活性剤が入っていないものを選ぶというのは、アトピー患者さんなら、すでに実践している人も多いのではないでしょうか。
当院でも、肌トラブルが生じる心配が少ない製品を院内の売店に取り揃えるなど、合成界面活性剤不使用の製品を推奨しています。
洗濯せっけんや重曹、クエン酸などを上手に使えば、蛍光剤や香料の入った洗剤、柔軟剤を使わなくても、洗浄効果と使い心地を両立することはできます。
それでも、水温が下がる冬場は、洗濯せっけんが衣類の繊維に残りやすくなるので、可能であればこの時期だけでも洗濯の際に少しお湯を足すなど、しっかりすすげる工夫をしたいところ。
洗濯洗剤が原因でアトピーが悪化していた患者さんの症例や、化学物質過敏症と洗濯洗剤についてについての記事を、このページの最後にご紹介しますので、あわせてお読みください。
化繊の下着・肌着はアトピーにはNG!
発熱系インナーなどの化繊下着は、皮膚を乾燥させ痒みを増強してしまいます。
水分を吸収し、繊維が発熱することで暖かくなるという仕組みの化繊下着は、皮膚の乾燥が避けられませんから、アトピー患者さんには適しているとは言えません。
冬場に限らず日頃から綿などの自然素材の下着を選び、寒いときは重ね着することをお勧めします。
電気毛布ではなく湯たんぽを!
電気毛布(敷毛布)は、皮膚の乾燥を引き起こすだけではなく接触面に毛嚢炎(もうのうえん)が生じて異常に痒くなることがあります。
接触した部分の血流がアップして皮脂分泌が増えたため、皮脂を好むマラセチアという酵母が繁殖したためです。
少なくとも入眠時には電気毛布のスイッチを切るか、湯たんぽ(電気加熱の簡易タイプが便利です)をおすすめします。
毛嚢炎(もうのうえん)とは・・・
毛嚢炎は、毛穴の奥の毛根を包んでいる部分に黄色ブドウ球菌やマラセチアが増殖して生じる炎症です。
特に、過食や栄養過多によるマラセチアの増殖に起因するものを「マラセチア毛嚢炎」と呼びます。
毛嚢炎は、毛穴部分が赤みを帯びてプツプツと盛り上がった状態となり、痛みを伴うのが特徴です。
冬型アトピーは秋から始まっています
季節の変わり目である秋には、皮膚そのものにも変化が生じます。
夏場、皮膚は体温を下げるために汗を多量に出す必要あり、汗腺の働きが活発でいつもジメジメしています。
このジメジメが大好きなのが黄色ブドウ球菌で、この黄色ブ菌の大量発生が夏型アトピーの特徴ですが、秋・冬は状況が一変。
汗腺の活動は低下し、今度は皮膚を乾燥から守る皮脂腺の活動が増して皮脂を盛んに分泌するようになり、皮脂が大好きなマラセチアという酵母タイプの微生物が毛穴で大量発生するようになります。
こうなると、顔、耳回り、後頭部、背中など皮脂腺の分布が多い領域を中心に皮膚炎が生じます。
酵母はカビの一種ですので角質誘導が生じ、皮膚の角質層が厚くなって乾燥と共に落屑(ふけ)を伴ったガサガサの冬型アトピー性皮膚炎となってしまうのです。
秋冬は美味しい誘惑が増えるシーズン
秋冬は美味しい誘惑が増えるシーズンですね。
夏には欲しかった水分の摂取は減り、チョコレートや油脂に富んだクリームを食べたくなります。
食欲の秋から始まって、冬はクリスマスやお正月、バレンタインデーといった行事ごとや、忘年会や新年会など、外食や飲酒の機会も多くなりがちですが、高カロリーな食事は皮脂の分泌が増え、マラセチアが増殖して点状の毛包炎を引き起こし強い痒みが生じますし、お酒が悪化因子になる可能性も少なくありません。
食事療法でアトピー改善!キーワードは「アラキドン酸」! 久保Dr.からのアドバイス
冬期の入院治療の特徴
当院がある飛騨高山は、日本列島のちょうど真ん中にある歴史と文化、豊かな自然が自慢の街です。
全国的にも有名な観光地ですからご存知の方も多いかも知れませんが、冬の高山は雪が降りますから、車には少なくとも12月~3月はチェーンやスタッドレスタイヤが必須です。また、院外へ散歩に出かけたりするときには防寒着やブーツも必要になります。
とは言え、院外が冷え込んでいてもクリニックの建物内は暖房が効いていて、各病室にもエアコンと乾燥が苦手なアトピー患者さんに優しいオイルヒーターを完備していますので、「想像以上に快適で雪の中のペンションで過ごしていたようでした」という感想をよく頂きます。
例年、冬場は比較的入院患者さんが少なくなりますが、そのぶんゆっくりと過ごせたり、気の合う患者さん同士が食堂の薪ストーブの前で話しに花を咲かせていたり、雪遊びをしていたり、冬には冬の過ごし方があるものですね。
この時期のバイオ入浴
バイオ入浴では、バクテリア培養に適した循環装置を使って浴水を管理しますが、この季節は特に電気代が気になるものです。
湯温が下がりやすい冬場は、湯温を一定に保つために循環装置内のヒーターの稼働が増えて電力消費がアップしますので、なるべく浴水が冷めないような対策が有効です。
入浴しない時間に保温用のアルミシートを浮かべておくだけで大幅な節電効果がありますから、患者さんにも使用を推奨しています。
アルミシートは100均にもあったりしますが、ホームセンターなどで売られている厚めのものが、浮力があってお勧めです。
実際に市販のメーターで1日あたりの消費電力を調べてみると、環境や条件によっては50%近く削減できていましたので、効果は小さくないはずです。
※24時間で10.7kwh→5.16kwhに↓(2022年、最高気温が-5℃という日に行ったテストです)