治療の現場から
歩くのもつらい皮膚炎が入院3週間でスポーツを楽しめるまで改善! 症例:59
2021.03.09治療の現場から
20代 女性 入院期間2020年9月~12月
入院までの経緯
乳児期から全身にアトピー性皮膚炎を発症。短期間だけステロイドを使用した後、0歳~10歳頃までは温泉水の配達サービスを利用してお湯を4日毎に取り替える自宅での温泉療法を行っていた。
中学・高校生時期は、症状がある程度落ち着いていたので温泉療法を終了したが、大学生になり、長時間の通学(片道2時間)が肉体的、心理的負担となって悪化。
20歳頃、少量のステロイドと漢方を併用する治療を見つけ、1年間ほど継続するも効果が見られず中止した。
その後も漢方での治療を継続していたが、入院の約2年前、就職活動を行っていた時期から再度悪化し就職を断念。
卒業後も自宅で療養を続け、入院の約1年前からは月1回程度の頻度で3泊4日程度の湯治を行っていたが、望ましい改善が得られずにいた。
就労困難な状態が続いており、このままではいけないと情報を収集する中で当院を知り外来受診、後日入院となった。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
入院後の経過
入院時の血液検査ではTARC25589と最重症レベルの入院患者さんで、特に足や手指の間に皮膚炎が強く生じていました。
指の間が少し白くなっているのは、湿潤(しつじゅん=ジクジクした状態)した患部の乾燥を促すために澱粉を塗布していたからです。
当初は靴を履くことが出来ず自宅からの移動もサンダル履きでしたが、入院から3週間経過時には入院患者さん向けの院内行事で体育館シューズを履いてラケットを握り、バドミントンを楽しめるまでに改善していました。
良好な治療経過は検査結果にも明確に表れていて、入院後1ケ月でTARCは11312と半分以下に、2ヶ月経過時点では4714と入院時の5分の1以下にまで改善。
退院時にはTARCが2017と入院時の12分の1まで低下しただけでなく、自覚症のPOEMが28→10点まで減少するなど、3ヶ月間の入院で見違えるほど改善して、退院後も自宅でバイオ入浴を行っています。
ドクターコラム
この患者さんのようにTh2免疫の活動性が高い急性期の症例では、TARCが極めて高値である最重症者ほど、検査結果の大幅な改善とアトピー性皮膚炎の劇的な改善が得られるケースが多いというのが、当院の入院症例の傾向です。
この患者さんも、入院時には特に足の甲や足首に滲出変化を伴う強い皮膚炎が生じていましたが、数日程度で乾燥傾向となって改善に向かい、退院時には見違えるほどきれいな皮膚を取り戻していました。
当院で入院治療を受けるアトピー性皮膚炎患者さんは、ノンステロイド薬の内服・外用治療と並行して食事療法や心理的なアプローチから症状の改善を図ります。
また、入院直後からバイオ入浴の実践方法の指導を受け、自室内や個人専用の浴室でバイオ入浴に取り組むことができるわけですが、バイオ入浴がアトピー患者さんの免疫変換や症状、体質の改善に大きく関わっていることは、これまでの当院の研究でも明らかで、現在この内容についての論文を準備しています。