バイオ入浴とは
バイオ入浴ってなに?
バイオ入浴とは、お風呂の中に有効バクテリア(主にバチルス菌属を始めとする土壌細菌叢)を培養して、そのお湯に入浴する養生法です。
多種多量のバクテリアや血液のビタミンと呼ばれる植物由来のLPS(リポポリサッカライド)に全身の皮膚が接触することで、アレルギー性の免疫細胞(Th2)に傾いた免疫バランスが自然免疫と呼ばれる免疫細胞(Th1)側に調整され、アトピー症状が改善します。
表のデータは、当院に入院しバイオ入浴にも取り組んだ患者さん5名の血液検査の値です。炎症の程度を示すTARCが大幅に改善しているだけでなく、Th1/Th2比が上昇(この場合は改善)していることがわかります。
人を守る免疫システムには、免疫を活性化する働きと過剰な免疫を制御する2つの働きがあり、双方のバランスが取れている必要があります。バイオ入浴の浴水中のバクテリア群は、Th1(自然免疫)を活性化すると同時にTh2(獲得免疫)を抑制してバランスをとっていて、薬物では困難な、人が本来持っている絶妙な免疫バランスを取り戻すはたらきをします。
また、バチルス菌は、アトピー性皮膚炎の炎症を引き起こす病原菌(黄色ブドウ球菌や真菌類)を抑制する力が強いため、お風呂に入ることで、皮膚に感染している病原菌を減らすことができるのです。
バチルス菌の病原菌 抑制効果
バチルス菌は人間にはとても身近な菌で、納豆菌などもこの仲間です。菌のなかでも非常に生命力が強く、味噌や醤油、日本酒などを造る蔵では納豆を食べて出勤することを禁止しているくらいです。
バチルスが他の菌を制圧する力を画像で解説します。画像はアトピーの原因となる真菌一種【カンジダ菌】を培養したシャーレを使っての抑制試験です。A、B、Cはそれぞれバチルス菌を、Dは抗真菌剤を加えて24時間後を観察したところ、バチルス菌は抗真菌剤と同じく、真菌の増殖を阻害することが確認できました。
透明になっているところが、カンジダを抑制している範囲(阻止帯)です。この画像はカンジダですが、黄色ブドウ球菌やマラセチアなど、他のアトピー原因菌についても、同じように増殖を阻害することがわかっています。
自宅でバイオ入浴を行う方法
自宅のお風呂場に循環加温装置を取り付ける必要があります。
この装置(培養装置として特許取得済み)を使用して、浴水中の酸素や湯温などを管理することで、有効なバクテリアを培養し、バイオ入浴に適した浴水を作ります。浴水は、継続的に正しく管理すれば1ヶ月間程度、使い続けることができます。
同じお湯を使い続けることに驚かれるかも知れませんが、老廃物や汚れの多くはバクテリアが分解するため、正しく管理すれば問題はありません。皮膚の状態が悪く、老廃物が多い時期は2〜3週間でお湯が臭ったり水質が悪化することがありますが、症状が改善するとそういった心配は減ります。
※詳しくはバイオ入浴の詳細ページをご覧ください。
■自宅で行う場合の費用(あくまで参考です)
自宅で始める場合の導入費
◎加温循環装置 330,000円
◎浴室に別途加工が必要となった場合の費用(配線・配管工事、架台設置等)
1ヶ月のランニングコスト=バクテリア粉末+循環装置の電気代
◎バクテリア粉末 7,480円×2袋=14,960円 ※通常1ヶ月に2袋使用
◎加温循環装置の電気代
消費量5~10kwh/日×31(日)=155~310kwh/月(1kwh28.46円とき1ヶ月4400~8800円、ただし燃料費調整額は含みません)
※電気消費量は、市販のメーターを用いて測定したものですが、設定温度や外気温、保温対策の有無によって大きく変動します。測定は2023年1月中旬、飛騨高山の極めて室温が下がりやすい浴室で実施しましたが、保温対策をした場合としなかった場合で、電気消費量に大きな開きがありました。
これらの費用が、ランニングコストとして見込まれますが、自宅に導入した場合、毎日一般の風呂を使用した場合に発生する、お湯を沸かすためのガスや電気、そして水道料金は発生しませんので、実質的なランニングコストは、削減される費用を相殺して考えたほうが適切です。
当院の関係者の中には、夫婦二人暮らしでバイオ入浴をやっているときの1ヶ月の光熱水費は、そうでないときよりも抑えられていたというケースもありました。
バイオ入浴にかかる毎月のランニングコストは、入浴する方の体質や人、気候などにも左右されますが、一般のステロイド治療で必要となる治療費や薬代、アトピー性皮膚炎による就業・就学の不可、あるいは精神的に引きこもりになり社会的活動ができない等の経済的・社会的損失を考えると、選択する価値は十分にあると思います。
バイオ入浴の効果
次のグラフは、2010年2月1日からの1年間に、本人の希望で当院に入院し、バイオ入浴(BSC=Biological Spa Care)を1ヶ月以上行った患者計30名(男15名 女15名)の血液検査データです。
当院では、アトピー性皮膚炎治療の検査データとしては、TARC、LDH、好酸球などを重要視していますが、いずれの項目でも、ほとんどの患者さんに良好な改善が見られています。
症例紹介のページには、患者さんご本人の許可を得た上で、具体的な経過や治療の内容を掲載していますのでご覧ください。
また、研究結果についてのページに上記グラフの内容など詳細を掲載しています。
バイオ入浴を始めるために
バイオ入浴は当院院長の久保賢介医師が長年研究・開発してきました。
医師、医療機関という社会的な責任を果たすため、今のところバイオ入浴については、当院に入院なさった患者さんを対象に、時間をかけて方法をお伝えしています。
入院中に、バイオ入浴を実践する上で必要となる知識と経験を身に付けて頂くのです。
また、お子さんが患者の場合には、付き添いをされる保護者の方にバイオ入浴について学んで頂くことになります。
長期の入院が難しい方を対象に、3泊4日の短期間で集中的に知識を身に付けて頂く、教育入院という制度もありますが、期間が短く理解が不十分になりやすいことや遠方にお住いの場合にその後の受診やアフターフォローが難しいことなどから、主に軽症の方を対象としています。
※教育入院リンク
将来的には、この方法に関心を持って理解して下さる医療機関や医師の協力を得ながら、多くの方が取り組みやすい体制を整えたい方針ですが、当面の間は当院に入院して身に付けて頂くこととなります。