治療の現場から

       

入院から1年、寝たきり状態から改善した症例:63のその後

2022.11.17治療の現場から

今回の記事は、症例:63として掲載している患者さんの退院からの経過をまとめたものです。

まずは、自己流脱ステで悪化 寝たきりだった青年も症状改善で気持ちにも変化 症例:63 をご覧ください。

この患者さんは、自己流の脱ステロイドによって寝たきり状態になり当院への入院を決意。

入院時、アトピー性皮膚炎の重症度を示すTARCが約76000(基準値450以下)と極めて重症状態で治療を開始しましたが、約5ヵ月間の入院で症状は大幅に改善しました。

それでも、退院直前の血液検査でTARCが10000を超えているなど、充分なコントロール状態には及ばない段階での退院であり、退院後も自宅でバイオ入浴を行いながら療養していました。

日帰り受診が困難な遠方に住んでいる患者さんですが、R3年6月の退院後も、数回の外来受診とオンライン診療を組み合わせて退院後のフォローをしました。
※当院のオンライン診療は、退院後の患者さんのみを対象にしています。

退院から約8ヶ月が経過したR4年1月、入院から1年の節目に外来受診なさった際の検査結果を紹介します。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

退院後4ヶ月での検査結果

TARCは6881に低下、急性期のアレルギー炎症を反映する好酸球は基準値内まで改善しています。

入院時10万を超えていたIgE(長期的なアレルギー体質を反映)も、退院時と比較して確実に低下しています。

退院後8ヶ月での検査結果

当院で治療を開始してちょうど1年での受診。

自宅療養中も規則正しい生活や、適度な運動、バイオ入浴、食事管理をきちんと実行していました。

検査結果ではTARCが3590まで低下し、細胞の破壊に比例して上昇するLDHも基準値内まで低下しました。

この患者さんは、入院前の数年間に他院で受けた血液検査でもTARCが7,000を下回ることはなかったということでしたが、ステロイド外用を使用していても落ち着かなかった皮膚炎が、ノンステロイド治療でコントロールされつつあることが判ります。

自宅でのバイオ入浴が、アトピー症状のコントロールに大きく役立っているものと考えられますが、TARC3000オーバーという値は中等症に相当するレベルであり、自覚症のPOEMも18点と低くありませんので、今後も慎重に体調を管理していくことが必要です。

1月の来院の数ヶ月後には就職し、社会生活に戻っています。

自己流脱ステの大きなリスク

この患者さんは、自己判断でステロイドを中止してから日常生活が困難なほど体調を崩していましたが、同じように、自己流の脱ステをしてからアトピー症状がコントロール不能になっている方が沢山いらっしゃいます。

また、脱ステに関する情報を探してこのサイトを訪れる方も多いことから、脱ステ経過で生じることが多い症状などをまとめたページを作っています。参考になれば幸いです。

アトピー脱ステロイドの経過と注意点

「先の見えないステロイド治療をやめたい」「ステロイドが効かなくなってしまった」という方には、当院のような脱ステ治療に積極的な医療機関へ入院して治療に取り組むことを強くお勧めします。

 

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