アトピー発症の原因(前編)
炎症の原因は病原菌
アトピー性皮膚炎の炎症は、乳児期の免疫形成がうまくいかず、病原菌を排除する機能が弱いまま成長した人の皮膚に、黄色ブドウ球菌やマラセチア、カンジダなどといった病原菌が感染することで起こります。 皮膚に繁殖した病原菌が炎症を起こしているのです。中でも毒性が強く、食中毒の原因菌として知られている黄色ブドウ球菌は、ほとんどのアトピー患者の皮膚に感染しており、皮膚にスタンプ培地を当てて培養すると、それらの菌を確認することができます。
- 左:アトピー性皮膚炎患者のスタンプ培地。
右:健常な肌でのスタンプ培地。
アトピー性皮膚炎の患者には黄色ブ菌の感染が見られますが、健常人の皮膚には黄色ブ菌はほとんどいません。 - マラセチア(カビの仲間)
マラセチアは皮膚から分泌される脂が大好きで、食べ過ぎで皮脂の分泌が増えると増殖します。
過食を避け、適切な食事療法に取り組むことも、成人型アトピーの改善に不可欠です。
約60年前の日本には、アトピーの人はほとんどいませんでした。アトピーをはじめアレルギー症状のほとんどは、先進国に多く途上国に少ない傾向にあります。
グラフをご覧頂くと、日本のアレルギー患者が急増していることがわかると思います。1960年代までほとんどなかったアレルギー疾患は、今では全国民の1/2が何らかのアレルギーを持つまでに増大してきました。また、重篤なアナフィラキシー反応はこの8年で3倍以上に増えており、数だけではなく重症度も増してきているのです。
【アナフィラキシーとは…】
極めて短い時間のうちに全身性にアレルギー症状が出る反応で、主にアレルゲンを食べる(飲む)、吸い込むことによって生じます。血圧の低下や意識障害などを引き起こし、生命を脅かすほど危険な状態になることも =アナフィラキシーショック
アレルギーの原因
母体との関係
衛生的な環境で育ち、予防接種を受けてウイルスの自然感染を経験していない母親は、たとえアトピーでなくとも免疫の形成はアンバランスで、胎盤や母乳を通して赤ちゃんに与える免疫力が低くなってしまうと考えられます。
また、妊娠中の母体では、自分とは遺伝子が半分異なる胎児を免疫細胞が攻撃しないよう、自然免疫が抑制され、胎児も母親と同様に、免疫が母親を攻撃しないよう自然免疫が抑制されています。
ですから、人間はアレルギー免疫が強い状態で生まれ、成長の過程で自然免疫を発達させているのです。
生後の環境
免疫システムが成長する時期である乳幼児期のアトピー性皮膚炎は、免疫力・免疫機能が未熟であるために起こる皮膚感染と食物アレルギーが原因です。
食物アレルギーでは、腸管免疫が未熟な時期には食物内の多くの抗原に反応しますが、成長するにしたがって次第に敵・味方の区別がついてきて過剰反応は収まります。
しかし、皮膚感染については、衛生的な環境で育てられ多様な菌と接触できなかったり、予防接種を打たれて自然免疫を発達させる機会が与えられないと、アレルギー免疫が強いまま成長してしまうのです。