バイオ入浴と民間療法との違い
バイオ入浴と民間療法(マコモ風呂)との違い
当院では、人間の免疫形成の仕組みを活用したアトピー性皮膚炎等の治療法として【バイオ入浴(Biological spa care=BSC)】を開発・提唱しています。
バイオ入浴を開発する上では、ある民間療法が大きなヒントとなりました。数十年にわたって愛好者の間で行われてきたこの民間療法では、アトピーをはじめとする皮膚炎が改善したという事例がいくつもあり、それに関心を抱いたことから研究がはじめバイオ入浴へと発展していきました。
現在のバイオ入浴は、この民間療法とはまったく別のものと言えるほど、考え方や作用機序、管理方法等が異なりますが、バイオ入浴とこの民間療法とを混同なさった患者さんが、結果的に健康被害を受けるという事例が相次いだ時期がありましたので、ここに両者の違いを解説します。
上記の民間療法は、一般的に次の方法で行われているようです
- ◎健康食品として市販されている植物の粉末を浴槽内に入れる(1500g~)。
- ◎浴槽の追い炊き機能や投げ込み式の電熱線ヒーター(熱棒)でお湯を温める(酸素の供給は行わない)。
- ◎原則的にお湯を交換することはなく、水かさが減ったときには湯を注ぎ足しながら、定期的に植物の粉末を追加投入する。
- ◎植物の粉末を内服することも広く推奨される。
- ◎植物の粉末は主にマルチ商法と近似した仕組み構成される販売員によって口コミで販売される。
- ◎上記の販売員が疾患や症状の診断をしたり、「改善する、良くなる、治癒する」といった発言を行ったりする。※医師法・薬機法に抵触
- ◎ブログやSNSには個人の体験談が多数あるが、誇大な表現や客観性に欠ける情報が多数見られる。
この民間療法の問題点
以上をふまえて、この民間療法の問題点を整理します。
- ◎免疫学や細菌学、免疫解析などの医学的裏付けがなく、作用起序も判明していない。
- ◎健康食品として内服を勧める人がいるが、内服が原因でアトピーが悪化する人が多数存在する。
- ◎投げ込みヒーターには、漏電・感電の危険性がある。
- ◎販売・宣伝する方が、医師法や薬機法に抵触した行為をすることがある。
この民間療法を開始してから体調が悪化してしまった人に対しては、民間療法の効果として、悪いものを出し(排毒し)病気を治していくはたらきがあるという説明が行われ、「排毒が進んでいる・耐えて続けるべきである」といったアドバイスによって健康被害を悪化・長期化させている。
バイオ入浴と上記の民間療法との違い
- ◎使用する植物粉末
バイオ入浴には、浴水中に培養されるバクテリアの遺伝子解析の結果などを踏まえ、私の意見を伝えて製造された提携会社製のバイオ粉末を使用します。
原材料は上記の民間療法と同じイネ科の植物ですが、使う物によって症状への働きかけに大きな違いが出ることは、この後に紹介する症例1~2によって図らずも実証されました。
- ◎温度・酸素の管理
バイオ入浴では、特許取得の循環培養装置で浴水の温度と酸素供給を管理し、有効バクテリアを培養します。有効バクテリアである土壌細菌叢の繁殖には酸素が必要ですから、水流の力を使い水中を撹拌して全体に酸素を行き渡らせています。
民間療法で使用される浴槽備え付けの追い炊き機能や、投げ込み式のヒーターは植物粉末の使用を前提にして製造されてはいませんので故障のリスクが高いうえ、投げ込みヒーターは漏電の危険性も付きまといます。
また、追い炊き・投げ込み式どちらも撹拌や酸素供給は出来ないので、粉末が沈殿したり、酸素不足となったり、アンモニアや硫化水素などの物質が発生して皮膚炎を悪化させることが考えられます。
※表を横にスクロールしてご覧ください。
バイオ入浴 | 民間療法 | |
---|---|---|
医学的エビデンス | あり | なし |
発酵粉末 | 提携会社が製造 医師の意見を伝達 |
古くから民間療法として、 一定のユーザーが存在 |
発酵粉末の投入量 | 一回400g 追加投入なし |
一回1500g以上 追加投入あり |
浴水の交換 | 一ヶ月に一回程度 | 交換せず、粉末を追加 |
浴水の管理方法 | 循環培養装置を使用 ※特許製品 浴水についても特許有 |
追い炊き機能 投げ込みヒーター |
撹拌・酸素供給 | ○ | × |
研究体制 | 微生物群のPCR検査 体内のサイトカインの測定 |
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また、バイオ入浴では、上記の発酵粉末を使った浴水以外にも、入浴する人によって、凍結タイプ、液体タイプといった浴水を使用することがあります。
バイオ入浴と民間療法の関係(久保院長による解説)
「イネ科植物『真菰』の葉の粉末を使用した入浴民間療法が、アトピー性皮膚炎に何らかの変化をもたらす」という事実は、私に大きな影響を与えてくれました。
しかし、これらの民間療法は科学的なアプローチは全くなされておらず効果も不安定。副作用も未知数であるため、そのまま患者に勧めることは医師として適切ではないと考え、研究・改良を続けて医療として認められるレベルまで効果と普遍性を高めたものがバイオ入浴です。
※アメリカ合衆国にて治療特許取得済み
公開番号2016-0089403
バイオ入浴の研究・開発
バクテリアの働きが関わっている民間療法を、診療所の開業医であり、臨床医である私が読み解くには、基礎医学の研究者の立場に立たねばならず、大変な覚悟と努力が必要とされました。
バクテリアの培養についての知識、医学で扱う感染性病原菌だけでなく環境微生物群(マイクロバイオーム)や発酵についての知識、水中の溶存酸素・化学物質の測定、免疫変化の測定など多方面の知識と研究が必要とされました。
また遺伝子(ゲノム)レベルでの検査も必要と判断した私は、院内に検査機器を導入し、遺伝子レベルでの免疫反応のデータも研究対象となりました。
海外論文を検索し、バイオ入浴で生じている事象が最先端の分野でどういう意味を持つのかを読み解く一方で、実際の治療法としてもどんどん改善を加えていきました。 ここ最近、ようやくアトピー性皮膚炎の全貌が見えてきて、世界中からどうやったらアトピー性皮膚炎をなくせるかという私にとっての命題に、自分なりの答えが見えてきたところです。
この間、提携会社の循環培養装置開発や簡易浴槽の開発にも関わり、同社が真菰発酵粉末の自社製造を開始した2018年からは、この製造工程にも新しいアプローチが可能になってきました。
科学的エビデンスの元に、バイオ入浴を安全で確実性のある療法として確立することで、日本のみならず世界中のアトピー性皮膚炎患者の役に立ちたいというのが、医療者である私の願いです。
参考症例
次のページに、当院が経験した民間療法の健康被害とみられる具体的症例を紹介しています。いずれも、バイオ入浴で改善・安定傾向にあった方が、民間療法的な手法を試して行って悪化した症例で、中には、当院が推奨しているバイオ粉末の優位性を裏付けるものも含まれます。
注意喚起:民間療法による健康被害情報
当院でバイオ入浴を身に付け自宅でも行っている患者さんには、一般的な医療機関では類を見ないほどのアフターフォローを提供してきたつもりですが、上記のような事例を受け、当院が推奨するバイオ入浴の方法論を実行する気のない方については、アフターフォローの対象から外さざるを得ない状況となっています。