治療の現場から
アトピー患者さんへの食事指導:前編
2020.04.18治療の現場から
アトピー治療の食事指導を受けてみた:前編
こんにちは!ナチュラルクリニック21で入院患者さんへの対応を担当している中川と申します。
アトピー患者さんであれば、アトピーの治療に食事療法が大切なことは皆さん大なり小なりご存知で、実際にこのサイトをご覧になる方の中にも、「アトピーの食事療法を検索していて辿り着いた」という方は少なくないようです。
当院でも、アトピー治療の食事療法にはとても大きなウエイトを置いていて、入院患者さんに対しては、日々の治療食の提供のほかにも、調理実習や管理栄養士による個別の栄養指導(食事指導)を実施しています。
今回の記事では、管理栄養士が入院患者さんにどのような栄養指導を行っているのか、わたし中川が実際に指導を受けてレポートしたいと思います。
中川:今日はよろしくお願いします。
今回は
①当院では入院患者さんにどんな食事を提供しているのか?
②退院後、日常的な食生活についてはどんなアドバイスをしているのか?
という二つのテーマについて話しを聴かせてもらい、前後編に分けて記事にします。
管理栄養士 木戸脇
当院の場合、食事も治療の一環であるという院長の方針に基づいて、入院期間中の食事の内容を管理しています。
ただ、退院後は、患者さんの意識や時間・経済的余裕によって取り組める食事管理はそれぞれなので、患者さんの実態に即したアドバイスを心がけています。
中川:
家族構成や仕事など、皆さん事情が違いますもんね。僕の場合は妻と二人暮らしなので、ある意味自由が利きますから、今日はしっかり勉強させて頂きます。まずは、患者さんへ提供する食事について教えて下さい。
木戸脇:
まず、久保院長から言われているのは、使用する油脂の質についてです。
サラダオイルは体内でアラキドン酸というアレルギー性の炎症を引き起こす物質に変化するので、加熱調理にはオリーブオイルを使います。
そして、生野菜のサラダなどにはアマニオイルやえごま油といったn-3系の油を使います。
血液検査でEPA/AA 比という項目を見ると摂取している油脂の質がわかるんですが、体調が反映されるので、この比率を重視するようにと院長から指示を受けています。
葉物野菜のサラダに良質のオイルをかけても、お皿の底に残ってしまうことが多いので、ポテトサラダなどに混ぜて調理し、しっかり摂取できるようにすることもありますね。
中川:
なるほど、オリーブオイルは自宅でもすぐに始められますね。
僕は料理が好きなので油とか調味料って関心がありますが、クリニックではどんなものを使ったり、お勧めしているんですか?
木戸脇:
まず、院内で使用する調味料は、原則的に無添加のものを選んでいます。患者さんにも同じように無添加のものを勧めますが、コストが高くつくことから徹底できない場合には、原材料の表示を見て、なるべくカタカナが少なくシンプルな表示のものを選ぶようアドバイスします。
安価な加工食品のほとんどは添加物で味や満足感を高めていますが、体にとっては異物です。体外に排出するのに多くの栄養素や酵素が消費されてしまうため、なるべく添加物は避けるべきです。
院内で使っている調味料は、参考までにリスト化して入院患者さんにお渡ししていますが、その中でも塩はしっかり選んで下さいとお伝えしていて、海水から作ったミネラル豊富な塩をお勧めしています。
中川:
このリストはありがたいですね。我が家は、妻が以前自然食に関わる仕事をしていたので、このラインナップにもなじみがありますが、まったく関心のなかった患者さんにはとても助かると思います。個人的には、20代の頃に小豆島で生活していた時期があるので、醤油が小豆島産なのが嬉しいです。
地元高山の味噌を使っているのも地域密着でいいですね。
木戸脇:
その土地の食品・食材というのも、食生活の楽しみにつながりますよね。治療食にも飛騨の郷土料理を取り入れたり、ごくたまにですが、名物の高山ラーメンをお出しすることがあります。高山ラーメンはあくまで患者さんの心の満足を重視してのメニューですが。
中川:
僕は、入院の問い合わせ窓口になっているのですが、入院を検討している方から、「お肉は出ないのですか?」とたずねられることがあります。
「お肉は食べられないの?」という意味でおっしゃる人も多い反面、実は「アトピー治療のため、家でもお肉は食べていないのに、食べて大丈夫なのですか?」という意味で聴かれることもあるんです。
クリニックの治療食には、動物性のものたびたび出ていると聴いていますが、どう考えていますか?
木戸脇:
肌の代謝が活発なアトピー患者さんは、適切にたんぱく質を摂る必要があるので、魚やお肉はたびたび献立に入れています。魚はEPAが豊富な青魚が中心、お肉は鶏肉です。
お肉は体が酸性に傾くし、脂肪分が含まれるので強く推奨はしませんが、たんぱく質を摂るという意味では有効です。
当院は、以前はがんで入院する患者さんが多かったので、当時は体が酸性になるお肉は一切出していませんでしたが、アトピー入院専門となっている現在では、たんぱく質を重視して鶏肉に限って使用しています。
牛・豚は原則使いませんね。あとは、大豆製品からもたんぱく質が摂れるよう献立を組んでいます。
中川:なるほど。酸性・アルカリ性という視点で食べるものを選ぶ方法もあるんですね。
僕は比較的肉類をよく食べる家庭に育ったので、大人になってからも、特に時間に余裕がないときは調理が簡単な肉食に走る傾向があります。
若い世代ほど野菜嫌いだったり偏食の人が多いように思うのですが、野菜はどんなふうに調理していますか?
木戸脇:
野菜を調理したり献立を組む時は、栄養素と酵素という二つの面で考えます。
酵素やビタミンは熱を加えると壊れてしまうものがありますから、消化酵素が豊富なキャベツや大根、ビタミンCを含む人参は生で食べることを勧めています。
ビタミンAと鉄分を含む青菜やビタミンB群が多いキノコ類は加熱して、各種ミネラルが豊富な海藻類なども献立には欠かせない食材です。また、植物性のものは体をアルカリ性に傾ける働きもしてくれます。
患者さんの中には野菜が苦手だったり偏食な人もいますが、入院中は健康食を『学ぶ』という意識を持って頂きたいと常日頃からお伝えしています。
中川:
そうですか。これまで、僕たち事務職員はクリニックの治療食を頂く機会がないのですが、実際に食べてみないと分からないことが多いので、今回院長に、職員みんなが治療食を体験できるような仕組みを提案しました。
調理員の皆さんのご協力もあって、さっそく来週から始まることになり感謝しています。
他に重視している栄養素や、お勧めの食品はありますか?
木戸脇:
亜鉛もぜひしっかり摂って欲しいですね。クリニックで出している発酵玄米には亜鉛がしっかり含まれています。
消化の関係で玄米が苦手だという方もいらっしゃいますが、発酵玄米は普通の玄米と比べると非常に消化が良くなっています。
発酵玄米も苦手という方には、料理の中にキヌアやアマランサス(南米原産のスーパーフード・直径1~2mmでプチプチした食感)を入れることもあります。
このように、スーパーフードなどを使って料理の中に特定の栄養素をプラスする方法は、退院後の生活にも役立つと思います。
中川:
へぇー!そんなスーパーフードも使っているとは知りませんでした。
退院後の食生活についても話題が出ました。
ここからは記事の後編として、退院後の食生活について行っているアドバイスを聴かせて下さい。
後編へつづく
食事がアトピーに与える影響はこちらのページでも
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