治療の現場から
アトピー患者はペットとどう関わる?:久保Dr.からのアドバイス
2021.01.30治療の現場から
私(院長の久保)は、アレルギー科の医師として長年アトピー患者さんの治療を行っていますが、イヌや猫といったペットが、アレルゲンとしてアトピー症状を悪化させているケースは非常に多く見られます。
医師である私にとっては、患者さんの健康が何より優先すべき事項ですから、このような患者さんにはペットを誰かにあずけたり、飼い続けるにしてもなるべく接触を減らすよう助言をせざるを得ず、その言葉に患者さんやご家族がショックを受けるという出来事が診察室ではたびたび起こります。
「家族だから、生きがいだから」という気持ちがわからないではありませんし、ペットとの関わりが精神的な健康に役立っていることもあるでしょう。
しかし、患者さんには家族同然のペットであっても、患者さん自身や家族の健康に悪影響を及ぼしているという客観的な検査データは、治療や体調維持のためには冷静に捉えなければなりません。
当院の患者さんでも、入院でアトピー性皮膚炎が非常に改善したものの、奥さんの愛犬がいる自宅に戻ると悪化してしまった事例などがありました。気弱な彼は、奥さんに愛犬を手放して欲しいとは言い出せないでいます。
他にも、お母さんが以前から飼っている室内犬の影響で、私が何度も忠告したにもかかわらず子どもたちのアトピーが悪化し、とうとう喘息にまでなってしまったケースもあります。
その点、最近退院した10代の患者さんのご両親は明確な決断を下し、ペットのためにアパートの一室を借り自宅内では飼わないようにしました。
「我が子とペット、どちらが大切か」という問いへの明らかな意思表示です。
世間にはペットを飼うことを非常に安易に考えている方が多いように思いますが、ペットを飼うには毎日の散歩、えさやり、糞の片付け、健康管理、ペットの老化や認知症での介護等に加えて、家族や周囲の健康面への配慮が必要です。
それら全てが整った条件下で、初めてペットの飼育が許されるものだと考えるべきです。
最終的にどのようにペットと関わるかは患者さんやご家族が決めることですが、私が医師という立場から強い言葉でそのリスクを伝えなければ、ペットを愛する患者さんは、退院後、何の疑問を持つことなく入院前と同じようなペットとの生活に戻るでしょう。
残念な話しですが、アトピー治療や健康な日常のためには、ペットと離れることが望ましい人がいるのは紛れもない事実です。
医師としては、アトピーなどのアレルギーで苦しんでいる患者さんで、ペットと密接に関わって生活している人には、アレルギー抗原の検査を受け、その結果を見ながら冷静に関わり方を検討する必要があると考えています。
院長 久保 賢介 のプロフィール
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
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