治療の現場から

       

ステロイドが効かない最重症アトピーが薬なし生活まで改善 症例:65

2021.10.29治療の現場から

30代 男性 入院期間2019年5月~9月

ステロイド治療でコントロールが得られなくなり、入院時の検査でTARCが10万を超えていた最重症患者さんが、退院後は定期の受診すら必要なくなっている症例です。

腰#65

症例写真は記事の後半に複数掲載しています。

入院までの経緯

小学校で発症しステロイド治療で改善

小学校2~3年生頃にアトピー性皮膚炎を発症。
高校卒業頃まで近医でステロイド外用にて治療を受けていたが、18歳で就職してからは10年ほど良好な状態だった。

再発しステロイド外用を常用するように

20代後半に再発してステロイド外用をときおり使用するようになった。その後、皮膚炎の範囲はゆっくりと拡大。体部にはベリーストロングタイプのステロイド外用を、顔にはマイルドタイプを常用するようになった。

円形脱毛症の治療をきっかけに悪化

35歳、総合病院にて円形脱毛症に対する局所免疫療法を受けたことをきっかけに皮膚症状が著しく悪化し、全身の体毛・毛髪が抜け落ちた。
アトピー性皮膚炎についても同病院で治療を受けていたが、症状は更に悪化したため当院を受診。最重症と判断して強く入院を勧奨した。

仕事等の都合から入院に向けて日程調整を行うこととしたが、その間も症状の悪化に歯止めが利かず、体を動かすことも困難となり入院を決意した。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

入院中検査結果#65

入院後の経過

TARC 約11万の最重症で入院

入院時の血液検査で、皮膚炎の重症度を示すTARCが11万超(基準値450以下)、皮膚炎の程度の指標となるLDHは624(基準値120~245・細胞の破壊に比例)という極めて重症状態で入院なさった患者さんです。

当院受診前に総合病院で処方されていたステロイドでも症状はコントロールできておらず、顔・首を除く全身に痒疹(ようしん:1㎝弱の硬い患部が点々と隆起するような皮膚炎で強い痒みを伴う)が生じているほか、掻き傷や色素沈着も確認できます。

顔や頭皮、耳の後ろ、脇の下、鼠径部などからは滲出液がしみ出して、本人も気になって眠れないほどでした。

入院後の発熱

入院から数日後に38.0℃の発熱が生じてから、しばらくは37~38℃程度の発熱が続き、最高では38.9℃の高熱となったこともありました。

このような発熱は、長年ステロイドによって抑制されていた免疫細胞が、入院し脱ステ状態となって抑制が解かれ、サイトカインを大量放出したことによって生じます。

1ヶ月間でTARCは約2万に

症状は、入院10日目頃にかけて大きな山を迎えましたが、その後は微熱や顔・頭皮等に滲出液が生じてはいるものの徐々に落ち着きはじめ、入院1ヶ月での検査では、11万を超えていたTARCが2万を下回るまで低下(改善)しました。

全国から重症アトピー患者が入院する当院としても稀に見るほどのTARCが高値な最重症者ですが、その後も何度か症状悪化の波を乗り越えながら治療とバイオ入浴を継続しました。

4ヶ月半でTARCは97%ダウン

最重症者ということもあり、退院可能な状態まで改善するのに4ヶ月半の期間を要しましたが、退院時にはTARC約3000、LDH、好酸球なども大きく改善を果たしています。

検査結果を時系列で見ると、はじめの1ヶ月であまりに急激にTARCが低下しているため、その後の推移が緩やかに感じられますが、ステロイドや免疫抑制剤を使うことなく、非ステロイド治療で4ヶ月半にTARCが97%以上低下するというのは劇的な改善です。

皮膚の状態も安定

その改善状況は写真でも明らかで、痒疹の痕は残ってはいますが傷や患部の隆起はなくなりました。
腕や背中の赤みや全身の色素沈着も、相当に改善しているのが一目瞭然です。
自宅でもバイオ入浴を行える準備を整えてから退院し、通院で継続的に治療を行うこととしました。

退院後の経過

バイオ入浴でTARCが1000以下に

退院後は職場復帰を果たし、自宅でバイオ入浴行いながら通院で治療を継続。

発汗の多い職場にもかかわらず、外来受診時の検査ではTARCをはじめとした数値は順調に改善し、退院後2ケ月半時点でTARC776と、1000を下回るまでに改善しました。

IgEも目に見えて改善

その後、発汗等で症状が生じる時期もありTARCも若干上昇しましたが、長期的なアレルギー体質の程度を示すIgEは入院時の約13000から、退院約半年(5.5ヶ月)時点で5000を下回るなど、アトピー症状は全体的に改善していることが確認できました。

その後、1年間ほどは受診することなく過ごしていましたが、自宅でバイオ入浴を継続し、アトピー症状はほとんどなく生活していたとのことです。

退院1年半でも更に改善

退院から約1年半、春になり乾燥予防の相談と現状把握のために受診した際の検査でも、アトピー性皮膚炎が安定状態であることに加え、IgEが3000以下に低下していてアレルギー体質そのものが軽減していることがわかります。

特に自覚症状を表すPOEM(アンケート形式の自覚症チェック)が1点ということは、バイオ入浴を続けることで、ほぼアトピーと無縁の状態にまで症状がコントロールされていることを物語ります。

2年経過でも自覚症状なし

退院後約2年が経過し、新型コロナワクチンの相談の相談を兼ねて受診した際もTARCは1,000を下回っていて、その他の項目も安定しています。

現在も毎日20分ほどのバイオ入浴を続けており、POEM0点と、痒みとは無縁の生活が続いているようで私(院長の久保)としても大変嬉しく思っています。

退院後検査結果#65

ドクターコラム

バイオの力が非ステロイドを後押し

ステロイドやプロトピックでは症状のコントロールが不可能になっていた最重症患者が、ノンステロイド・ノンケミカルでのコントロールに成功した症例です。

ノンケミカルを達成した秘訣が有機的なバイオ(バクテリア)の力にあることは、これからの人類の医療や健康を考える上で、大きなヒントになります。

人類は多種多様な微生物にささえられて進化・成長する

バイオテクノロジーを活用した薬品やサプリメントは既に市中に溢れていますが、バイオ入浴は、1種類(あるいは特定の数種類)のバクテリアを精製培養するのではなく、多種多様な微生物が生息する自然環境を再現した入浴法です。

過度に衛生的な生活環境がアレルギー体質を誘発するという「衛生仮説」を理解すると、アレルギー体質を予防したり改善するためには、人間が成長したり生活する環境にバクテリアと接触する機会を多く設ける必要があることがわかります。

背中#65

デコルテ#65

両腕#65

ふくらはぎ#65

脛#65

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