治療の現場から
バイオ入浴だけじゃない!皮膚の病原菌を減らす食事療法とは? 久保Dr.からのアドバイス
2020.08.04治療の現場から
成人型アトピーと食物アレルギーの関係とは?
アトピーの治療・改善を考えるときは患者さんの年齢に応じて、小児アトピーと成人型アトピーに分類して考える必要があります。
小児アトピーは、人体が外部に接するバリア、すなわち
消化管粘膜→皮膚→気道や目の粘膜
という順番で免疫形成が行われる時期に生じます。
食物に対しても、口腔や胃や腸の消化管粘膜が反応しながら免疫を形成しますから、食べ物の種類は大きな問題です。
対して成人型アトピーは、小児アトピーが学童期を越えても改善しない又は学童期以降に発症したアトピーのことですが、すでに上記の免疫形成期間は過ぎていますので、食物アレルギーが問題になることはほとんどなく、小児期のアトピーにはなかった皮膚の病原性微生物(黄色ブドウ球菌やマラセチア、カンジダ)に強く感作しています。
成人型アトピーは「皮膚免疫の形成がアンバランスな人に生じた病原性微生物感染」です。
アトピー患者さんはこの大前提を押さえておいて下さい。
端的に言えば、成人型アトピー性皮膚炎のアレルゲンは病原性微生物だけであり、食べ物やスギ花粉、ダニもほとんど無関係なのです。
ですから当院の食事指導では、「卵アレルギーだから卵を避けましょう」、「樹木花粉症だから交差反応が起こる果物を避けましょう」などという指導は行いません。
※アナフィラキシーなどの強い反応が生じる食物アレルギーには、除去食等の必要な対応を行います。
当院の食事指導のポイントは大きく分けて次の3つ
①カロリーを抑え、日々の食事を腹6~8分にすること
②悪化要因となる食材をなるべく避ける
③アレルギーを抑制したり、腸内微生物が喜ぶ食材を選ぶ
特に、成人型のアトピー患者さんは自然免疫系という免疫が弱いため、“ちょっとしたこと”が引き金になって、皮膚に感染している病原性微生物が一気に拡大してしまうのですが、この「ちょっとしたこと」の代表が食生活の乱れです。
アトピーに過食は禁物!事例で見る食事の大切さ:久保Dr.からのアドバイス
黄色いかさぶたに覆われた顔や首も改善 入院期間2019年2月~3月 症例:50
病原性微生物の増殖は、皮膚から分泌される皮脂の栄養に依存しています。
そして、皮脂分泌を抑えるには、①のカロリーを抑えることがものすごく重要なのです。
アトピー体質の方は、過食に対しては細心の注意が必要で、「みんなと同じだけしか食べてないから、私は食べ過ぎていない」では残念ながら済まされないのです。
過食➡病原性微生物感染拡大➡アレルギー炎症
という流れで症状を悪化させていては、いくら軟膏を塗ってみても仕方がありません。
カロリーコントロールの足掛かりとしては、まず、毎日食べたものを全て記録しましょう。
そして、症状が悪化したら直前に食べたものを確認するのです。
乳製品やチョコ、ナッツ、揚げ物など油脂を多く含んだ食品は当然ですが、ご飯や麺、パンなどの炭水化物も最終的には中性脂肪に変わり、摂り過ぎれば毛穴の皮脂腺から脂質として分泌されて、病原性微生物の大増殖に繋がります。
患者さんの中にも、自分の食生活がカロリー過多になっているという認識がなく、私が指摘して初めて自覚するという方がよくいます。
よく有るケースは
「乳製品は避けて、豆乳を毎日飲んでいます・・・えーっ!?豆乳はだめなんですか?」
「チョコレートは食べていませんよ。でも甘い物が好きなのでドライフルーツを毎日食べています・・・えーっ!?だめなんですか?」
といった具合です。
全体的なカロリーの把握と、アトピーの悪化要因である小麦、砂糖、乳製品、香辛料、アルコール、肉、油脂を多く含む食品、お菓子、揚げ物、ジュースなどを日常的に摂っていないか。
自分自身の適正量を知った上で、日々の食事を管理することが大切です。
また、心理的なストレスから暴飲暴食に走ってしまう場合には、ストレスの原因や、そのストレスを受け止める自分の心の状態にも目を向けてみる必要があります。
ひとりで向き合うのが難しければ、カウンセラーなど専門家の力を借りると良いでしょう。
ストレスをゼロにすることは難しくても、ストレスのはけ口を過食に求めないような心のコントロールを身に付けることが重要です。
食べ過ぎはアトピーだけでなく、生活習慣病をはじめとした様々な病気を引き起こします。
アトピーに向き合う中で健康的な食習慣を身に付けることが出来れば、これらの病気の予防にもつながり、患者さんの人生がより良いものになるのではないかと思います。
②悪化要因となる食材をなるべく避ける
については、
食事療法でアトピー改善!キーワードは「アラキドン酸」! 久保Dr.からのアドバイス
などもお勧めの記事です。
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院長 久保 賢介 のプロフィール
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介