治療の現場から
バイオ入浴を教育入院で開始 多忙な弁護士業でも症状コントロールに成功 症例:85
2024.02.05治療の現場から
44歳 男性 2020年 教育入院(3泊4日)
入院までの経緯
幼少期から青年期にかけて皮膚症状はなかった。
2014年、弁護士として勤務を始めたころから食生活が乱れがちになり、睡眠不足、心理的なストレスが増加した。
この年の夏、急に右腕が赤黒くなり皮膚科を受診してステロイド外用を処方されて使用したが、腹や背中にも症状がひろがった。
同じ皮膚科を再受診したところ、ステロイドの外用では手に負えないと診断され、ステロイド内服を勧められたが断った。
しばらく様子を見ていたが一向に改善せず、夜も眠れない状態となったため別の医療機関を受診。
内服薬と外用剤の処方を受けて使用したところ、赤黒い炎症は治まり、その後2年間は通院して内服・外用での治療を継続していた。
この間、症状は少し収まっていたが、背中のかゆみは続き、薬を飲み忘れると次の日には肌がカサついて、今にも悪化しそうな状態だと感じながら過ごしていた。
次第に薬の効き目が悪くなり、顔にも皮膚炎が生じるようになったためベリーストロングのステロイド外用を使用したが、炎症は治まらず不安が強まった。
2016年の秋、痒みや顔面の症状が治まらないまま薬を使い続けることに抵抗感が募り、非ステロイド治療を受けられる皮膚科に受診しながらステロイド治療を中止(脱ステ)。
脱ステ後は、約8ヶ月間にわたって顔や身体が黒くなったり滲出液が出たり、皮膚が剥がれる(落屑)といった悪化状態が続いた。
また、脱ステ直後には左目が白内障となり、後に手術も経験。
その後、症状はいったん小康状態となったが、時間が経つにつれ顔や首、胸など広範囲に赤黒い炎症が再発し、落屑も増加。
痒み・痛みで眠れず、睡眠は1日3時間程度。顔面の皮膚炎が強く精神的な負担も増して、仕事上で人に会うのがつらい状態であった。
2日に1回のペースで片道1時間かけて温泉療法にも通ったが、症状の改善にはつながらず、打開する方法を求めて当院を受診。
2020年9月、教育入院にてバイオ入浴やアトピー改善の知識を習得して、自宅にてバイオ入浴を開始した。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
教育入院とその後の経過
3泊4日の教育入院中は、強い皮膚炎が生じているにも関わらずプログラムが詰め込まれていてご本人にはハードだったかと思いますが、バイオ入浴や食事療法についてのレクチャーを受けながらバイオ入浴を体験。
教育入院後の自宅でバイオ入浴は、家族への負担にならないよう個別の簡易浴槽(Bacillus Pure)を使用してスタートできたことも、ご本人にとっては気持ちが楽になったようです。
3週間後に外来受診した際の検査では、TARC1203、LD184、好酸球10.9%と明らかな改善が見られ、翌月にはTARC723をはじめ検査結果は更に改善。
自覚症状を表すPOEMも8点と軽症状態まで改善しつつあることが見てとれます。
その後も通院やオンライン診療での受診を続けながら自宅でバイオ入浴を行い、症状はコントロール状態に。
2023年11月、教育入院後3年が経過し久しぶりに来院なさった際にも、乾燥感はあるものの安定的に過ごせいて、人前で話すセミナーなどの仕事も問題なく行えており、多忙な毎日を送る現在も、安定状態のときは2日で30分程度、不安定な状態と感じたときには90分程度バイオ入浴を行っていると話してくれました。
血液検査の結果では好酸球の上昇は見られますがTARC586、LD173、POEM4という値から、概ね安定状態であることがよくわかります。
「私自身、貴院を受診するまでに2年間ためらいの期間がありました。自分の症例が他の患者さんの参考になるのなら、写真だけでなく詳しい経過や肩書き、仕事内容といったことも掲載してかまいません」とおっしゃって下さっての症例紹介となりました。
ドクターコラム
弁護士と税理士という二つの分野で活躍するこちらの患者さん。当院受診まで6年間にわたって重症アトピーで苦悩していましたが、仕事柄、長期入院が困難ということで、バイオ入浴の習得を目的とした教育入院を希望なさいました。
教育入院は自宅での症状変化等に対する対応が課題となり、希望する全ての患者さんをお受け入れしているわけではありませんが、この患者さんは比較的通院しやすい場所にお住いであったことや、バイオ入浴を行うことに強い意志を持っていらっしゃったことから、お受け入れすることとなりました。
当院の教育入院は、その患者さんの症状や治療に関する理解度、積極性、通院の容易性、社会的に置かれている状況に応じて受け入れの可否を判断していますが、この患者さんのように順調に結果が得られるケースと、バイオ入浴を実生活に落とし込むことに苦労なさるケースがあるのが正直なところです。
当院のような小規模なクリニックではマンパワーに限りがあり、普段の診療・入院業務に加えて教育入院に対応することは担当スタッフにも負担が小さくありませんが、この患者さんのような症例はスタッフの励みにもなっています。