治療の現場から
化学物質過敏症と洗濯洗剤について 久保Dr.からのアドバイス
2022.12.22治療の現場から
あなたは普段、どのように衣類を洗濯なさっていますか?
今回は、洗濯と香害、そして洗剤が原因のアレルギーについての記事です。
筆者のプロフィール
ナチュラルクリニック21院長 久保 賢介
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
詳しいプロフィール 医師・スタッフ紹介
増える化学物質過敏症
最近、化学物質過敏症の患者さんを診る機会が増えてきました。
血液検査(RAST)でもイソシアネート、無水フタル酸、ホルマリンなどの化学物質で陽性を示すケースが増加しています。
髪の染色剤、塗装の有機溶剤、ゴム手袋、農薬などが原因とみられることもありますが、最近は洗濯洗剤や柔軟剤の香りの成分を長持ちさせるために使用される、プラスチックのマイクロカプセルが問題になっています。
マイクロプラスチックによる汚染は、海や海洋生物以上に人類の体内で進んでいるのかも知れません。
また、洗剤や柔軟剤の香りによる健康被害は深刻で、気分不良・喘息などが生じる人もいます。
もちろん「いい香り」と感じる人もいますが、周囲にはその匂いを好まない人や、気分が悪くなっていることを言い出せない人がいることもあるのです。
ある化学物質過敏症の50代女性は、香害により子育てや勤務もできなくなって田舎に移り住みひっそりと生活なさっていますが、血液検査ではイソシアネートへのアレルギー反応が陽性でした。
歯科材料の金属にも、プラスチックのレジンにも反応してしまうため、歯科治療もできないでいます。
アトピー患者さんの洗濯
このブログを読んでいる方は、ほとんどがアトピー患者さんやそのご家族などではないかと思いますが、アトピーで悩んでいる人なら洗濯洗剤を厳選していることも多いものです。
しかし、自分で洗濯をすることが少ない患者さん(主に既婚男性や実家暮らしの若者)などには、洗濯方法や使う洗剤に無頓着な方も少なからずいらっしゃるようです。
当院に入院なさった患者さんの中にも、洗濯洗剤を変えたことをきっかけに症状が悪化し、その後コントロールに苦労していたという方がいましたが、肌に直接触れる衣類を洗う洗剤は、皮膚症状にダイレクトに関係することがあります。
当院のあるスタッフは自分自身が軽症のアトピーだということもあり「肌に優しくて汚れが綺麗に落ちる洗濯方法」として、次の本を参考に洗濯をしているそうですが、アトピー患者さんの参考になる部分も多いのではないかと思います。
ナチュラルおせんたく大全
著者:本橋ひろえ(主婦の友社)
著者ご自身が、以前は化学薬品会社で合成洗剤の製造を担当していたとのことで、この本では、衣類のあらゆる汚れを落とす方法を、科学的・理論的に説明していらっしゃいます。
おすすめの洗濯方法を一部抜粋
※スタッフのアレンジが若干あるかも知れません。
①縦型洗濯機を使用する
②洗剤を入れて洗う前に、汗汚れを水洗いで落とす(予洗い)
→水溶性の汚れを予め落としておきます。※お湯だとよりよく落ちます。
→バケツや桶でもいいですが、洗濯機で洗いと脱水をしてもOK。
③洗濯機に液体せっけん、重曹、酸素系漂白剤を適量入れお湯で洗濯する
→酸素系漂白剤を入れるのは皮脂や油汚れ、臭い防止のためです。
→お湯を使うのは酸素系漂白剤をしっかり溶かすことと、油脂汚れを浮き上がらせるためです。
→30分程度、漬け込むとよりよく落ちます。
→衣類の汚れは酸性なので、重曹を入れて洗浄液のアルカリ性がなるべく中和されないようにします。
→柔軟剤代わりにクエン酸を適量入れると、仕上がりがやわらかくなります。
④洗濯が終わったら直ちに干す
→洗剤を問わない洗濯の基本。洗い終わってから30分以内に干さないと、雑菌の繁殖が進んでしまうそうです。
詳しく知りたい!という方は、ぜひ本を手に取ってみて下さい。みなさんの、日々の洗濯方法や洗剤選びの参考になれば幸いです。