治療の現場から

       

大学へ通えなくなっていた青年が覚悟の入院。大学復帰を果たした 症例:84

2024.01.16治療の現場から

10代 男性 2023年 入院51日間

右耳#84

口周り#84

ひざ裏#84

背中#84

両腕#84

限定解除

入院までの経緯

乳児期から頭部に脂漏性皮膚炎が生じて頭皮がボロボロだったが、成長するに従い軽減。幼稚園では軽度の喘息があるものの皮膚状態は良好だった。

小学5年生の終わり頃、四肢屈曲部に皮膚炎が生じてアトピーと診断受け、ステロイドとプロトピックによる治療を開始したが、その後ステロイドが効かなくなり中学1年の頃には皮膚がボコボコした状態になった。

中学1年生の夏、近医に通院しながらステロイドを減量したが、ほとんど寝たきりの状態となる。
ステロイドの内服を使用したり、通院する医療機関を変えたこともあったが、良くなったり悪くなったりの繰り返しであった。

当院への入院前しばらくは、ほぼステロイドを使用せずに生活。
入院の3ヶ月前に大学進学したが皮膚炎は全身性に悪化して通学困難となり、インターネット検索で知った当院を受診し入院となった。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

検査結果#84

入院後の経過

全身の広い範囲に強い皮膚炎を認め、自覚症状を反映するPOEMもMAXの28点。皮膚炎の程度を示すTARCも15740と最重症状態で入院なさった十代後半の患者さんです。

入院時の検査結果からは、皮膚炎による皮膚の代謝と滲出液等の漏出によって、体内の栄養素が漏れて栄養状態が悪化していることが見て取れました。

入院後は治療と並行してバイオ入浴も実践。「入院後、一時的に症状が悪化することもあり得る」という当院からの事前説明を受けて、いろいろな準備や気持ちの覚悟をしていたそうですが、入院翌日には既に改善の兆しが感じられ、前日に撮影した症状の記録写真と見比べても、全体のカサツキや傷が軽減していました。

入院2週間時点で実施した血液検査では、TARCは約3000と入院時の1/4まで低下し、急性期のアレルギーを反映する好酸球、細胞の破壊に比例して増加するLD/IFCCも明らかに低下(改善)しています。

IgEは上昇していますが、急激に皮膚症状が改善した場合には、抗原がだぶついてかえってIgEが上昇するケースはたびたびあることです。

その後も改善は順調で、1ヶ月が経過する頃にはTARCは1/10、好酸球とLDは基準値目前にまで低下、POEMも7と軽症レベルまで改善しました。

入院時の症状から当初は3カ月の入院期間を目安に治療を開始しましたが、目覚ましく改善が進んだこともあって2ヶ月を待たずに退院することができ、大学への復帰を果たすこともできました。

藁をもつかむ気持ちで当院を受診した患者さんの期待に応えることができ、ご両親にも非常に喜んで頂けて、当院としても幸いでした。

退院後2ケ月が経過して外来を受診した際の検査では、TARCや好酸球はわずかに上昇していましたが、POEMは退院時を維持、IgEは減少に転じていることから、良好に維持できていると言える状態でした。

ドクターコラム

当院のアトピー治療の特徴のひとつに、食生活を重視するということが挙げられます。
入院中は間食不可、野菜中心のメニューという当院の治療食は、それまで奔放に食事を楽しんでいた患者さんには、物足りない面があるのは仕方ないでしょう。

反対に、アトピーが良くなるようにと完全菜食やマクロビオティック、ヴィーガンなどを徹底して行っていた患者さんは、入院してから「あれも、これも、この食品も食べていいんだ」と嬉しく思うこともあるようで、今回紹介した症例患者さんは後者のケースでした。

どちらのケースでも入院中は食生活が管理・コントロールされますが、前者のような患者さんは気を引き締めて退院後の自己管理に臨んで頂く必要があります。

topへ