治療の現場から
洗濯洗剤にアレルギー反応 増える薬に疑問を感じ脱ステし悪化した 男性 症例:76
2023.03.02治療の現場から
40代 男性 2021年 入院52日間
洗濯洗剤に強いアレルギー反応。ステロイド外用/内服、免疫抑制剤の内服など、増え続ける薬に疑問を抱いて脱ステして悪化した男性が、1ヶ月で自覚症状なしのレベルまで改善した症例です。
入院までの経緯
31才の頃(入院の十数年前)、太ももに肌荒れが生じて近医を受診。ステロイド軟膏を処方され使用を開始した。
半年後、洗濯洗剤を低刺激なものに変えたところ肌荒れが改善。
ステロイドを中止したところ、一時的に皮膚のひび割れが生じたが乗り切ることができた。
以後は花粉症の治療のために近医で抗アレルギー剤の処方や血液検査を受けていたが、検査データではアレルギー症状は改善傾向であった。
入院の約3年前、ワイシャツに漂白効果の高い洗濯洗剤を使ったことによって、強いアレルギー反応が生じ、首から上が真っ赤になった。
実際に洗濯を行ったのが自分ではなかったので、はじめは原因がわからず、同じ洗剤で洗ったワイシャツを着用していた3日間は症状が続いたが、4日目に服を買い替えたところ皮膚炎の悪化が止まった。
その後、週2~3回の温泉療養を行いステロイド軟膏は使用せずに過ごしていたが、ウエットティッシュを使うとアレルギー反応が出ることが増え、除菌した受話器を使うと耳の皮膚がただれたり、体に蕁麻疹が生じたりしていた。
入院の約1年半前に右目の白内障がわかり、これまで以上にアトピー性皮膚炎の治療が必要と考え、ステロイド軟膏を本格的に使用するようになった。半年後にはステロイド内服を開始。
その後、免疫抑制剤(シクロスポリン)の内服も行うようになったが、ステロイド軟膏の使用量が増えていく一方であることに疑問を抱き、入院の3週間ほど前から自宅にて自己判断でステロイドの使用を中止した。
強いリバウンド反応が出たあと徐々に落ち着いてきたものの、今後の治療法を模索して当院を受診し入院となった。なお、当院受診の半年前(ステロイド内服・外用を使用中)に他院で受けた検査結果では、炎症の程度を示すTARCは5223であった。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
入院後の経過
入院時のTARCが約11000と重症レベルのアトピー患者さんです。
約3週間前に自宅で脱ステロイドしていたため、入院時にはリバウンドによる症状悪化が生じていたと考えられます。アレルギー検査の結果では、マラセチアやカンジタなどの真菌類に反応が強く出ていました。
入院後はノンステロイド治療と並行してバイオ入浴も実践。
顔全体に浸出液による塊が生じていましたが、入院後数日で取れ、滲出液も止まって落屑も軽減しました。
入院2週間が経過して行った血液検査でも、順調な回復が確認されました。
また、入院前は中性脂肪の値が高く内服治療を行っていたとのことですが、入院後は当院の標準的な治療食を食べていただけで数値が改善したことを、ご本人は驚いていました。
皮膚症状も順調に改善へと向かい、入院1ヶ月で実施した検査の結果はTARC619(基準値目前)、POEM 0(自覚症状なし)をはじめ、非常に良好なものでした。
※改善に時間を要するIgEは入院中に上下しています。
自宅でのバイオ入浴について家族と相談の必要があるとのことでしたが、改善が早かった人ほど、バイオ入浴を中止すると症状が悪化するケースが多いため、なるべく早く自宅でのバイオ入浴をすることを勧めました。※退院後、自宅に導入なさいました。
ドクターコラム
洗濯洗剤が合わなかったことをきっかけに症状が悪化し、その後のコントロールに苦労なさっていた患者さんですが、この患者さんに関わらず、洗濯洗剤やせっけん、シャンプー、ボディーソープなどの日用品がアトピーの悪化要因になることは充分に考えられることです。
重症のアトピー患者であれば日用品についても吟味なさっている場合が多いですが、軽症者の場合はそれほど注意することもなく、市販の合成洗剤ばかりを使用していることも多いのです。
こういった患者さんには、まずは合成界面活性剤の使用をやめ、身の回りの洗剤・洗浄剤を見直すことを勧めますが、それだけで症状が軽快することもあります。
当院でも、私が成分等を見て選んだ製品を院内の売店で取り扱っており、入院患者さんには入院中はこれらの製品を使用することを推奨しています。
洗濯洗剤や柔軟剤などに含まれる香料を原因とした健康トラブルと、肌に優しい洗濯についての記事もアップしていますので、そちらもご覧ください。