治療の現場から
胸部から激しい皮膚炎が拡大していた男性。痒みと痛み、色素沈着も改善 症例:53
2020.08.25治療の現場から
50代 男性 入院期間2020年5月~7月
入院までの経緯
40代頃から皮膚に湿疹がでることはあったが、食事面などに気を付ければ、生活に支障はきたしていなかった。
しかし、入院の半年ほど前、飲酒量が増加した事をきっかけに胸や腋に湿疹が生じ、次第に拡大。
その後、滲出液も伴うようになり痒みや痛みも強まって不眠状態となった。
皮膚炎の範囲は背中にまで拡大し、非ステロイド治療が受けられる医療機関を探して当院を受診、入院となった。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
入院後の経過
胸や腕の付根、背中など、局所的に強い湿疹が生じていた患者さんです。
数ヶ月間で急激に症状が生じ悪化したということですが、特に胸は毛穴がボコボコと隆起して赤紫色に変色しているうえに、多量の滲出液も生じています。
入院時は痒み以外に痛みの訴えも強く、不眠にも悩まされていましたが、入院治療の開始と同時にバイオ入浴もスタートすると順調に改善傾向となり、入院から1ヶ月間で滲出液や湿疹の盛り上がりも目に見えて減少しました。
痒みや痛みも大幅に改善し、この時点でTARCは基準値までもう少しの550。自覚症の値POEMも3まで低下しました。
その後も、カウンセリングを積極的に受けるなど、真摯に治療に取り組み、退院時には湿疹部の隆起が相当程度軽減しているのが、写真からも確認できます。
湿疹が強かった部位にはまだまだ色素沈着が残っているものの、悩まされていた痒みや痛みは大幅に改善しての退院となりました。
院長コラム
通常、IgEや好酸球が高くてアトピー性皮膚炎傾向のある方は、自然免疫が弱くて、飲酒や過食をきっかけに皮膚の細菌叢バランスが崩れやすく、マラセチアなどの異常増殖が生じて皮膚炎が悪化します。
この症例のように、皮膚炎が強いわりにTARCが余り高くないというのが、マラセチアに対するアレルギーの1つの特徴だと私は考えています。
いわゆる慢性型と呼ばれるタイプで、Th2アレルギー黄色ブドウ球菌が主体の急性型とは違い、Th17やTh1アレルギーが関与していると考えられています。
バイオ入浴は、タイプの違いに関わらず効果を発揮し、免疫の偏りを是正する働きがあるようです。