治療の現場から

       

脱ステ悪化の発熱や滲出液も乗り越え痒疹(ようしん)も改善 症例:51

2020.06.09治療の現場から

30代男性 入院期間2020年3月~6月

膝1#51

膝2#51

入院までの経緯

幼稚園は手のひらに湿疹、学童期は背部に湿疹が生じて毎日ステロイド軟膏を使用していた。
中学から大学にかけても1日1回塗布を続けていたが、乾燥が強まる冬場には悪化。
就職後、症状はやや悪化し脚にも拡がった。

当院入院の2年前
悪化傾向にあった時期に、脱ステロイドで改善した知人のエピソードを聞いて試したものの、更に悪化して大きな病院へ通院することとなった。

全身にステロイド軟膏の外用、内服治療を2ヶ月間試したがコントロール不良となり、プロトピックも3ヶ月間ほど試したが期待した効果が得られなかった。

入院の数ヶ月前
症状は更に悪化し、腕や脚、頭皮に強く症状が出るようになった。
どうにか癒される方法を見つけようとネット検索し、当院を受診。職場や家族の理解を得て入院となった。

検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。

検査結果#51

幼少期にアトピー性皮膚炎を発症し、ステロイド使用を続けていたた30代男性の重症アトピー患者さんです。
ステロイドの内服や漢方も試しましたが改善せず、プロトピックでも効果が得られていませんでした。

入院時は、アトピー性皮膚炎の重症状態が長期に及んでいる患者によく見られる痒疹(ようしん)がヒザやスネを中心に多発しており、色素沈着も生じていました。

脛1#51脛2#51

入院の前日まで強度の高いステロイドを使用していたため、上半身の皮膚炎はある程度抑えられていましたが、腹部や背中は赤く腫れているような状態でした。

こういった治療歴から、当院への入院でステロイドを使わない治療に切り替えると、いわゆる[脱ステのリバウンド]が生じることが予想されたため、患者さんご本人に「しばらくは動き回ることが辛い状態になることも覚悟しておいてください。」とお伝えした上での入院となりました。

入院後の経過

入院後は、やはり脱ステによってリバウンドが生じ、滲出液や落屑が増加。
悪寒・寒気を伴う発熱が生じた時期もあり、入院から1ヶ月ほどはかなり辛い時期となりました。

それでも、当院の非ステロイド治療と並行してバイオ入浴にも取り組んだこともあって、入院時20000超だったTARCが入院から1ヶ月後には5000台にまで低下しています。

入院から2ヶ月を経過する頃までは、免疫刺激による反応でリンパ節が腫れたり、微熱が出るなどの経過を辿りましたが、辛抱強く治療やバイオ入浴に取り組んでいらっしゃいました。

足の甲1#51

足の甲2#51
リバウンドによって好酸球が上昇し、入院から3ヶ月後にあたる退院時でも基準値を上回っていますが、ご本人の努力もあって炎症を示すTARCは1169と、入院時からは大幅に下落。また、アレルギー体質そのものを示すIgEの値も、入院時との比較では大きく低下しています。

大きく盛り上がりがあったスネやヒザの痒疹も退院する頃にはほぼ消失しました。

自覚症の改善

当院がアトピー患者さんに対して実施しているPOEMという検査は、過去1週間のアトピー性皮膚炎の自覚症を患者さんが回答する方式で行うもので、皮膚炎がどの程度日常生活の障害となっているかを知るのに役立ちます。

この患者さんは、入院時はPOEM27点と最重症値だったのが退院時はわずか1点と、日常的にはほとんど痒みすらない状態まで改善しました。下記に、設問の内容と回答を掲載します。

Q1 この1週間で、皮膚のかゆみがあった日は何日ありましたか?
毎日(入院時)4点 → なし(退院時)0点

Q2 この1週間で、湿疹のために夜の睡眠が妨げられた日は何日ありましたか?
4日(入院時)4点 → なし(退院時)0点

Q3 この1週間で、湿疹のために皮膚から出血した日は何日ありましたか?
毎日(入院時)4点 → なし(退院時)0点

Q4 この1週間で、湿疹のために皮膚がジクジク(透明な液体がにじみ出る)
した日は何日ありましたか?
5~6日(入院時)3点 → なし(退院時)0点

Q5 この1週間で、湿疹のために皮膚にひび割れができた日は何日ありましたか?
毎日(入院時)4点 → なし(退院時)0点

Q6 この1週間で、湿疹のために皮膚がポロポロと剥がれ落ちた日は
何日ありましたか?
毎日(入院時)4点 → なし(退院時)0点

Q7 この1週間で、湿疹のために皮膚が乾燥またはザラザラしていると
感じた日は何日ありましたか?
毎日(入院時)4点 → 1日(退院時)1点

久保院長からのコメント

当院に入院する患者さんの中には、過去に自己流の脱ステを試みて何度もリバウンドを繰り返してきたという方や、リバウンドの余りのつらさに途中でステロイド治療に戻った経験があるという方は少なくありません。

また、リバウンド期を乗り越えたけれども結局アトピー性皮膚炎そのものは改善していないという方からも、入院の問い合わせを頂きます。
ステロイドをやめたとしても体質(免疫)は変化しないのです。

かかと1#51

かかと2#51

入院の直前までステロイド治療を行っていた患者さんは、原則ステロイドを使用しない方針の当院で入院治療を開始すると、ステロイド離脱に伴う症状悪化(いわゆるリバウンド)がみられるのが普通です。

このような患者さんの脱ステロイドを支え続けてきた当院では、長年の経験で培ってきた非ステロイド療法と食事療法、心理療法を組み合わせた治療に加え、バイオ入浴での免疫刺激を組み合わせることで、ほとんどの重症アトピー患者さんが、2~3ヶ月程度の入院で日常生活に支障がないレベルにまで症状を改善させて退院なさっています。

アレルギーの一種であるアトピー性皮膚炎は免疫の異常反応が原因の病ですから、異常を起こしている免疫を免疫抑制剤で抑え込むのではなく、免疫を改善し、症状が生じない状態にコントロールするという根源的なアプローチが大切です。

痒疹は、一般的にはステロイド治療でも治すことが困難な病変ですが、当院に入院しバイオ入浴にも取り組んだ患者さんには珍しくありません。

【痒疹が改善したその他の症例】

症例17:最強ステロイドも歯が立たなかったアトピーに伴う結節性痒疹が普通肌に

症例18:11歳 痒疹(ようしん)を交えた重症小児アトピー

痒疹はひっかき傷やカサツキ、落屑のような代表的・一般的なアトピー性皮膚炎の症状とは異なり、ゆっくりとしか改善しませんが、バイオ入浴の免疫効果は難治性の痒疹の改善をも促します。

治療条件

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