治療の現場から
退院後、バイオ入浴を中止して悪化。再入院した男性 症例:67
2022.01.07治療の現場から
入院期間 初回2014年10月~2015年3月、2回目2021年10月~11月
アトピーで当院を退院後バイオ入浴を中止していた男性が、再び悪化して再入院。順調に改善し2ヶ月間で退院なさった症例です。
症例写真は記事の後半に複数掲載しています。
2回目入院までの経緯
脱ステ後4年間のリバウンド、一度は安定するも悪化して当院に入院
幼少期からアトピーでステロイド治療を受けていたが24歳で脱ステ。強いリバウンドが生じて4年間ほど寝たきりとなり、ひきこもり状態であったがその後改善した。
30歳頃から5年間ほど仕事のため地元を離れて生活を開始。状態は悪くなかったが、退職して実家に帰った頃から症状が悪化し当院に入院となった。
初回入院時の検査では、生じている皮膚炎の程度を反映するTARCが6361(基準値450以下)と重症状態であったが、約1ヶ月間で1685まで低下、3ヶ月後には軽症レベルの802まで改善した。
じっくりと着実な改善、退院後もバイオ入浴
TARCの改善は順調であったが、その他の検査項目(好酸球など)で改善が緩やかなものがあったため、5ヶ月間の入院となった。
退院時、好酸球は高値であるがLDHは基準値内となり、TARCも過去3ヶ月にわたって1000以下を維持していて、自覚症も改善。自宅でもバイオ入浴を開始した。
検査データの見方は掲載症例の見方をご覧ください。
自宅バイオ入浴で状態を維持していたが中止後に悪化
その後、約5年間にわたって自宅でバイオ入浴を行い良好な皮膚の状態を維持していたが、再入院の2年前、引っ越しをきっかけにバイオ入浴を中止。
その後も何とか状態は維持できていたが、再入院の3ケ月前、夏の暑さが強まりはじめてから悪化傾向となり、日常生活が困難な状態となり再入院することとなった。
入院後の経過
前回よりも悪化状態での入院
当院退院後、自宅でのバイオ入浴で状態を維持していた患者さんが、バイオ入浴中止後に悪化して再入院となった症例です。
再入院時の検査では、TARCが16236と初回入院時を上回る値で、好酸球も43%で非常に高い値でした。※この患者さんは、初回入院のときから体質的にも好酸球が高い(下がりにくい)傾向にあります。
入院後は順調に改善
再入院での治療経過は非常に順調で、約2ヶ月間でTARCは436と初回の退院時を下回る値まで改善。
以前の入院では下がりきらなかった好酸球も7.0と基準値内になりました。
他の検査項目でも改善に時間を要するIgEを除いて順調な改善が得られており、退院後に自宅でもバイオ入浴を実施できる環境も整ったため、約2ヶ月間で退院となりました。
初回入院の経験から本人は年をまたぐ覚悟をしていたため、早く退院できることを喜んでいました。
ドクターコラム
バイオ入浴は継続が必要
この症例紹介のブログでもたびたび申し上げていることですが、バイオ入浴は継続が必要なアトピー性皮膚炎の養生法です。
有効バクテリア群と皮膚が接触することで免疫細胞に働きかけるバイオ入浴が体の免疫バランスそのものを是正することは、これまでの研究でわかっていますが、免疫機構が決定づけられる乳児幼児期を過ぎた患者さんのアトピー・アレルギー体質を完治させることは容易ではなく、実際この患者さんのようにバイオ入浴でコントロールが出来ていたのに、入浴を中止してからアトピーが再悪化する患者さんはたびたびいらっしゃいます。
アトピーは完治ではなくコントロールを目指すべき病
バイオ入浴は、ステロイド外用薬一辺倒のアトピー治療法とは異なる観点から免疫にアプローチする方法であり、過去の入院患者さんの中には自宅で数年間バイオ入浴を実施した後に中止し、以降もバイオ入浴なしで良好な状態を維持しているという方もいらっしゃいます。
しかし、免疫形成期を過ぎたアトピー患者さんがそれを目指すのは現実的ではありません。
成人型のアトピー性皮膚炎はストレス・食事・皮膚の微生物の変化による免疫バランスの崩れで発症し、一度バランスを崩すと立ち直るのに長い時間がかかります。
入院前から自宅バイオ入浴を念頭に
入院を希望している患者さんでも、退院後、自宅でバイオ入浴が出来ないとおっしゃることがありますが、せっかく数ヶ月かけて皮膚炎を治療したにもかかわらず、退院後してすぐにぶり返してしまっては元も子もありません。
バイオ入浴は、あくまでも免疫を抑制する薬(ステロイドやプロトピック、免疫抑制剤)に頼らずにアトピー症状をコントロールしようとする方法であるということをご理解頂きたいと思います。