治療の現場から
食事療法でアトピー改善!キーワードは「アラキドン酸」! 久保Dr.からのアドバイス
2020.07.04治療の現場から
アトピーを悪化させる油とは??
食事に関するメインページにも記載しているように、アトピー性皮膚炎の食事療法は、摂り入れる油脂の選択が重要です。
現代人は、サラダ油などのリノール酸を多く含んだ食品を過剰摂取していると言われていますが、リノール酸は体内でアラキドン酸という物質に変化し、アレルギーを促進したり、炎症に拍車をかけるので要注意です。
摂取する油脂のポイントは二つ
①リノール酸を控える
リノール酸を控えるための最もシンプルで効果的な方法は、調理油をオレイン酸が主のオリーブオイルに切り替えて、毎日の食事を当院の入院食のように肉や乳製品を控えた「本来の日本食」にすることです。
②αリノレン酸を意識的に摂る
青魚や海藻、野菜、亜麻仁油などに含まれるαリノレン酸を意識的に摂るようにすると、体内ではプロスタグランジンE3というアレルギーを抑える物質が作られてアトピー改善につながるだけでなく、動脈硬化などのリスク低減も期待できます。
プロスタグランジンとは?
プロスタグランジンは生理活性物質とも呼ばれ、摂取した油脂(不飽和脂肪酸)から体内で作られます。
プロスタグランジンにはいくつも種類がありますが、大きく3グループに分類され、アトピー改善にはこの3種類の特徴を理解することが役立ちます。
グループ①プロスタグランジンE1(以下、PGE1)
PGE1は、体内でリノール酸から変換されたジホモγ-リノレン酸から作られます。
※上の図を参照しながら読むと、わかりやすいです。
PGE1には炎症を抑える働きがあるので、いっけんするとリノール酸を積極的に摂っても良いようにも思えますが、ジホモγ-リノレン酸からはPGE1以上にアラキドン酸が多く作られます。
リノール酸の過剰摂取はアラキドン酸が過多となり、アトピーの悪化につながるのです。
できあいのお惣菜(特に揚げ物)を控えるべきなのもこのような理由です。
グループ②プロスタグランジンE2(以下、PGE2)
リノール酸から変換されてできる、アラキドン酸から作られるのがPGE2です。
PGE2は、脳の神経発達や機能を促進させるなど人体には必要な物質ですが、過剰になるとアレルギー反応を強めます。また、アラキドン酸からはロイコトリエンという炎症促進物質も作られます。
現代人はリノール酸(アラキドン酸)を過剰摂取していて、意識的に減らそうとしてもPGE2が不足する心配はほとんどありませんから、アトピー改善にはアラキドン酸を減らした食生活が有効です。
グループ③プロスタグランジンE3(以下、PGE3)
PGE3は、オメガ3系の脂肪酸であるαリノレン酸からEPAを経て作られます。
PGE3はアレルギーを抑える働きがありますが、現代人の食生活ではα-リノレン酸は不足しがちなので、シソ油やアマニ油などのオイルを加熱せずサラダ等に使ったり、サバやイワシ、アジなどの青魚や、海藻などαリノレン酸が豊富に含まれる食材を積極的に食べましょう。
食事療法の効果は1ヶ月であらわれる!
当院では、入院時と入院後1ヶ月経過時点の2回、患者さんの血清中のアラキドン酸を測定していますが、ほとんどの患者さんは1ヶ月時点でアラキドン酸が低下します。
このグラフは30人の入院患者さんを対象に行った、血中のアラキドン酸検査の結果をまとめたものです。
ほとんどの患者さんが、入院後の1ヶ月間で血清中のアラキドン酸が低下していて、入院時の平均123.9µg/mlから平均98.2µg/mlまで、約20.8%の低下が確認されています。
入院時にアラキドン酸が基準値を上回るほど高い患者さんは多くありませんが、食事療法でアラキドン酸が低下すれば、炎症やアレルギーを促進するPGE2が減少し、アトピー症状の改善に役立ちます。
また、肉や乳製品、揚げ物などを減らすことで皮脂分泌が抑えられ、マラセチア(カビ)が原因の皮膚炎が改善しやすくなります。
この記事のまとめ
①アトピー改善にはリノール酸の摂取をなるべく控える
②青魚や亜麻仁油などからαリノレン酸を意識的に摂る
③食事療法を1ケ月続ければ、アラキドン酸の低下が期待できる
アトピー食事療法については以下の記事にも
アトピーに過食は禁物!事例で見る食事の大切さ:久保Dr.からのアドバイス
当院の食事療法のポイントや日々のメニューはInstagram【ナチュクリキッチン】でも発信中です。
院長 久保 賢介 のプロフィール
1957年4月3日 福岡県 北九州市出身
2001年10月 有床診療所ナチュラルクリニック21 開設
所属学会:日本アレルギー学会/日本心身医学会
15年間以上、アトピー性皮膚炎患者の入院治療にあたっている。
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