治療の現場から

       

2019年~2020年入院の治療実績データを公開!

2021.01.15治療の現場から

TARCで見る治療実績

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上のグラフは、2019年~2020年の間にアトピー性皮膚炎で初めて当院へ入院し、入院治療を行った重症患者さん36名の治療前後でのTARC(ターク・皮膚炎の程度を測る検査マーカー)平均値です。※対象患者の詳細は文末に記載します。

入院時には平均値 15537(最高111253・中央値7905)だったのが、退院時には平均 2530(最低436・中央値1628)と84%低下(改善)しています。小数点以下は切下げ

個人別の中央値でも82.6%低下(改善)と、入院した多くの重症アトピー患者さんが大幅に症状を改善して退院なさっていることが判ります。

治療は原則ステロイドを使わない治療(非ステ治療)が中心ですが、最重症期スポット的にステロイドを使用した例も数例ありました。また、全ての患者さんが治療と並行してバイオ入浴にも取り組んでいました。
バイオ入浴の免疫変換作用がアトピー性皮膚炎の炎症を抑え、脱ステのリバウンド軽減や皮膚再生を助けます。

当院では非ステロイドを中心とした治療の他にも、食事療法や心理療法を取り入れた統合的なケアを行っていますので、この治療実績は、そのすべてが組み合わさっての結果です。

データの詳細は最後に掲載しますが、ポイントをまとめると

●TARCが入院時の1/2未満まで低下したのは36例中32例、1/10未満まで低下したのは36例中26例

●退院時にTARCが1000未満となったのは25例

●低下率が最も大きかったのは-97.5%低下した次の2例でした。

Kさん 30代男性 35172→893

Hさん 30代女性 17596→436

●TARCが低下しなかった症例は2例ありましたが、好酸球やPOEMは低下していて、TARC以外の検査項目において症状の改善が確認できました。

TARCは、アトピー性皮膚炎の程度を示す最も鋭敏な指標で、皮膚の免疫を担当する樹状細胞や血小板が分泌します。※基準値は450pg/ml以下、1500以上で中等症に分類

POEMで見る治療実績

次のグラフは、上のグラフと同じ期間に入院治療を行った患者さんの治療前後でのPOEM(自覚症の値)平均値です。

POEM改善グラフ

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入院時平均22.3点だったのが、退院時には平均8点と64%低下(改善)しています。※小数点以下は切下げ

ポイントをまとめると

●36例中、最重症に分類される21点以上で入院した患者は25名、その内14名が退院時には10点未満まで改善。

●POEMが低下しなかった症例は2例ありましたが、いずれもTARCや好酸球は低下しており、血液検査においては症状の改善が確認できました。

POEMは、アトピー性皮膚炎の自覚症状を含めた重症度の指標で、アンケート方式で自己採点も可能な評価手法です。※28点満点で21~28点が最重症の目安

参照データ

症例データ表

アトピー患者さんが入院の直前までステロイドを使用していた場合、入院時の検査では値が低く(軽く)抑えられていて、入院後、ステロイドを中止したことによって症状が悪化するケースが非常に多いため、今回ご紹介する統計もこの影響を大きく受けています。

入院から数日~数週経過後に症状が最も悪化した時期を迎える患者さんが多いということは、この統計は最も悪化している時点と退院時の検査結果を比較しているのではなく、あくまでも当院での入院治療の最初と最後のデータを比較しているということになります。

対象患者

・2019年1月~2020年12月末日までに入院した患者のうち、入院時の検査でTARCが3000 pg/ml以上であった重症~最重症に分類されるアトピー性皮膚炎患者

・平均の入院日数は85日

対象から除外した患者

複数回の入院歴がある方についての2回目以降
入院期間28日未満の方(教育入院や本人都合による短期入院者を除外)
アトピー性皮膚炎以外の皮膚炎によって入院した方
入院時の年齢が15歳以下の方

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